JR豊肥線犬飼駅のホームでいつも何気なく眺めていた重力式擁壁。あれ!これってアルカリシリカ反応(ASR)?苔類や真菌類で汚れているため判りにくいが段差のある巨視的なひび割れと白色のゲルの滲出が見られる。大分県北部地方ではASRの報告があるが、この中部地方では珍しいのではないか。しかし最近の文献によると、反応性骨材の分布は大分県中部から北西部に多いと報告されており、この重力式擁壁が高度成長期の昭和30年代から昭和40年代に施工されていると考えると、JR豊肥線の沿線上にASRが見られても不思議ではない。ただ無筋構造物である場合、鉄筋の腐食や曲げ部の破断等による構造物の耐荷力への影響は少ないと予想されるが、ASRによるコンクリート構造物の劣化が近隣の主要構造物に及んでいる可能性があり注意が必要である。
道 脇 哲 郎